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最高裁判所第三小法廷 昭和58年(あ)93号 判決 1984年6月19日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人小島峰雄の上告趣意第一点について

所論は、事実誤認、単なる法令違反の主張であって、適法な上告理由にあたらない。

なお、許可を受けた医療用具製造業者から、各容器に約三〇本ないし一〇〇本宛収納して封じられたいわゆる円皮鍼(薬事法二条四項、同法施行令一条・別表第一の器具器械八〇号により薬事法上の医療用具の一つとされるはり用器具の一種に属するもの)を購入したうえ、一般の需要に応ずるため、これを一本宛右各容器内から取り出し、他の容器内に数本宛収納して封じるという作業を無許可で業として行った被告人の行為(原判文参照)は、医療用具等の品質、有効性及び安全性の確保を目的とする薬事法の目的・趣旨(同法一条参照)等に照らして、同法一二条一項所定の無許可で業として医療用具の小分けをする行為にあたるというべきであるから、これと同旨の原判断は正当である。

同第二点について

所論は、医療用具の小分けを無許可で業として行うことを禁止している薬事法一二条一項の規定及び右規定に違反して小分けされた医療用具の販売を禁止している同法六四条、五五条二項の規定は、憲法二二条一項に違反するというのである。

しかし、前記のような円皮鍼を業として小分けする行為を自由に放任するならば、円皮鍼の汚染等公衆に対する保健衛生上有害な結果を招来するおそれがあると認められるから、本件小分け行為につき薬事法一二条一項の規定を、同規定に違反して小分けされた円皮鍼を販売した本件行為につき同法六四条、五五条二項の規定をそれぞれ適用しても、職業選択の自由に対する必要かつ合理的な制約にとどまり、憲法二二条一項に違反するものでないことは、当裁判所大法廷判例(昭和三八年(あ)第三一七九号同四〇年七月一四日判決・刑集一九巻五号五五四頁)の趣旨に徴して明らかである。所論は理由がない。

よって、刑訴法四〇八条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 木戸口久治 裁判官 横井大三 裁判官 伊藤正己 裁判官 安岡滿彦)

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